銘盤を作るためには、まず榧の古木を選定することから始まります。成育地の北限は東北地方ですが、宮崎の山間部を中心とした大分・熊本・鹿児島にまたがる九州山脈の榧は、日向産榧と言って珍重されております。
特に宮崎県の綾営林署管内より切り出される榧が最も良質な材とされています。
人跡未踏の深山で、特有の地質と南国の強い太陽・多雨により刻み込まれた木目のよい年輪を用いることが銘盤の第一条件となります。
碁盤に使用される榧材は樹齢400~600年以上のものを使用しますが、現在は殆どが国有林となり、盤に適した榧の古木は払底している状態です。ですので、昔は碁盤師がじかに立木を選定していましたが、現在は営林署が原木を伐採して一定の丸太に切り、入札にかけるシステムとなっています。
丸太の原木を目の前にして、経験と勘をたよりにどういう盤が何面取れるかを見極める眼力が、銘盤が生まれるかどうかの分かれ目となります。
また、丸太の原木を購入して作業場に運びこみ、すぐ盤作りに取り掛かるわけではありません。木材の加工にあたるときは、碁盤に限らず、乾燥しているかどうかが一番大きな問題になります。生のままでは、割れやすい、シミが出やすい、虫がつきやすい、打ち味が悪いなど困ることばかり。
ですので、原木を切り出したのち、加工するまでに最低十年は寝かせて自然乾燥させなければならず(これを碁盤師は「寝かせる」と言います)、特有のヒビ割れ、狂いなどの欠点がほとんど出尽くしたあとで、初めて最終的な仕上げの作業に取りかかるのです。これを「二度作り」と言います。この後はさまざまな欠点はふたたび生じることはありません。
現在では榧材は大変な貴重品となっております。私の所では国内材を十年以上乾かしてから作るので、お客様に苦情を頂いたことは一度もございません。
当店は榧碁盤の老舗として、プロ棋士の故中山典之七段より推薦の辞を頂いております。
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