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盤材の名称と木取り例

 原材の丸太からどう碁盤を作るかは、碁盤師の最も苦心することの一つです。それを「木取り」と言います。

 木取りには、柾目、板目、四方木口と3種類があります。四方木口の盤は別に「魔除けの盤」といって縁起をかつぐ向きもありますが、実用面から見ますと、盤の角が欠けやすい、盤面の木目が斜めで不自然などのために、今ではほとんど作る人はいなくなりました。

 柾目には、(1) 天地柾、(2) 天柾、(3) 四方柾、(4) 追柾の4種、板目には、(1) 木裏面、(2) 木表面の2種があります。

盤材の名称と木取り例

(1) 天地柾

 「天から出た木目が地へ」という意味ですから、盤の木口(こぐち)を見て、面の部分の木目が真下に抜けているのが、本当の意味の「天地柾」の木取りです。芯の中心点から線を引くと、木口の上下の中心点を抜ける形になります。
 ですから、天地柾の木取りに限って、理屈上は面(おもて)も裏もないわけですから、より美しい方を面に作ることになります。したがって、木端(こば)は両方ともに完全な板目になるのが天地柾の特徴です。

(2) 天柾

 芯から引いた線が即盤面という木取り。天柾の特徴は、面と木目とが全て直角になるため、面にあらわれる木目がすっきりと立って、引き締まった美しさになります。面と裏は完全に異なるわけですが、面の美しさを重視した最高の木取りです。

(3) 四方柾

 上下、左右の四方が柾という木取りです。天柾と殆ど変わらないのですが、大きな木でないと四方に完全な柾が出にくいそうです。その意味でも、完全な四方柾は珍重されていますが、実際は追柾を四方柾と錯覚している場合が殆どです。

(4) 追柾

 前述の天地柾や天柾を取った後に、もう一つ柾目の盤が取れる場合、また、木が小さくてもともと天地柾や天柾が取れないといったときに、追柾を作ることがあります。追柾の木取りの最も顕著なところは、芯に寄っている側の木目がはっきり粗くなっているところです。
 盤面の芯に近い部分に板目(竹の子模様)が出ているようであれば、それはもう板目の盤であって、柾目の盤とは言えません。

板目盤の木取り

(1) 木裏面

 木の芯の側を木裏、木の皮の方を木表といいます。同じ板目の盤でも、盤面にあらわれるのが木の芯の方か皮の方かで、板目の盤の呼称と価値が違うということになります。なお、同じ木裏面でも、板目(竹の子模様)のあらわれる位置が盤面の中央にありますと、左右のバランスがとれて美しいので「行儀の良い盤」などとも呼ばれ、特に高い評価を受けています。

(2) 木表面

 木の表皮の方が盤面になっています。上の図のように、盤面が大板目になる欠点があり、「片面の盤」などと言われ、木裏面よりランクが下と見られます。芯側に割れやシミなどの欠点がある場合にする木取りです。

木取りの寸法を測る

 図のように、天地柾や天柾の盤を取るにはそれなりの木の直径が必要です。木が細く柾目の盤が取れない場合には、板目の盤を作ります。柾目の盤を作るとなると、シラタや芯の部分は使えませんので、乾燥期間も考慮して少なくとも樹齢400年以上の榧である必要があります。しかもフシがなく雷の落ちた形跡もない、完璧な素材を求めるとなると、それはもう大変な稀少材ということになります。

 榧材が枯渇していることを憂いた宮崎市が日向榧の植林プロジェクトを立ち上げていますが、盤材として使用できるまでには500年の歳月がかかるそうです。柾目の盤がどれだけ稀少であるかお分かりいただけると思います。


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